からだはいつも治ろうとしている~細胞の再生力

からだはいつも治ろうとしている~細胞の再生力

 わたしたちは、自分のからだに備わっているしくみのことを意外と知りません。

 だれでも病気にかかったりケガをしたりしますが、そこから回復しているのはからだに備わっている治す機能がはたらくからです。

 東洋医学では、この治す機能のことを自己治癒力(自然治癒力)と呼んできました。

 数千年も昔から言われてきた自己治癒力の実態が、今、科学の進歩によって解き明かされようとしています。

 自己治癒力の代表は、免疫システムです。免疫力という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

 これ以外にもすばらしい機能が、わたしたちのからだには備わっています。今回はその中から、「細胞の再生力」についてお話しします。

からだの中で最多の細胞

 わたしたちのからだは約200種類、60兆個の細胞で構成されています。内臓や骨、筋肉、皮膚、血液、神経などすべて細胞の集まりです。

 では、からだ中で最多の細胞はなんでしょうか。

 それは、赤血球です。なんと、からだの3分の1を占めています。

 なぜ、赤血球が最も多いのでしょうか。

 赤血球には酸素をからだの隅々まで運ぶ役目があります。全身にくまなく酸素を届けるには、それだけの数が必要になのです。

 この赤血球の寿命は、約120日で、毎日新しく作り替えられています。一日に全赤血球の約1%が、新しい赤血球に生まれ変わっています。元気な赤血球に生まれ変わることで、十分な酸素が全身に届けられているわけです。

日々再生される意外な細胞

 はからだの中で最も硬くて変化しない、というイメージがありますが、骨も毎日、新しく作り替えられています。

 どのようにして作り替えられているのか見ていきましょう。

 2種類の細胞が協力して骨を再生しています。

 1つは破骨(はこつ)細胞という、古くなった部分を壊して吸収していく細胞です。そしてもう1つは、骨芽(こつが)細胞と呼ばれる細胞が、新たな骨をせっせと生み出して、破骨細胞が削り取った分を修復していきます。

 骨の硬いイメージとは裏腹に、たえず骨吸収と骨形成をおこなうことで丈夫な骨を保っているのです。およそ5年ほどで全身の骨が作り替えられていると考えられています(諸説あります)。

 もちろんケガで骨折を負ったときに治しているのは、湿布や痛み止めの薬ではなく、この再生機能が治しています。

環境にすばやく適応する細胞

 外界との境である皮膚細胞のもつ適応力もすばらしいものです。皮膚の細胞は環境の変化にすばやく対応します。

 わかりやすい例は日焼けです。紫外線が強くなるとメラノサイトという色素細胞が黒いつぶを作り出します。シミやそばかすのもとになるメラニン色素のかたまりです。

 南国に行ったとき、わたしたちの皮膚では、メラノサイトが一斉にメラニン色素を作り放出しはじめます。放出されたメラニン色素は周りの細胞にわたされ、その内部に取り込まれます。

 そして、メラニン色素は細胞の核に集まります。なぜなら、核には大事なDNAがあるからです。つまり、内部に取り込まれたメラニン色素はもっとも大事なDNAを紫外線から守っているのです。

 旅行から帰ってくると、真っ黒に日焼けした肌はどんどん薄くなっていきます。これは、メラニン色素を抱え込んだ細胞が、新陳代謝で新しい細胞に生まれ変わるからです。

 わざわざ元にもどすのにも大切な理由があります。大量の紫外線は有害ですが、ある程度の紫外線はビタミンDの合成のために必要だからです。

 南国ほどの日射がない環境で黒い肌では、必要な量の紫外線をうけることができず、ビタミンD不足が起きてしまいます。ビタミンDは骨の成長に必要なビタミンです。

 南国に肌の黒い人が多く、北国に肌の白い人が多いのはとても理にかなったことなのです。

 皮膚細胞は、環境にすばやく適応して再生する力を持っています。

最も頻繁に再生する細胞

 皮膚細胞はすばやく環境に対応して生まれ変わりますが、実は、もっと頻繁に再生している細胞があります。

 それは、小腸の細胞です。

 小腸の表面にある細胞は約200種類ある細胞のなかで、もっとも短命な細胞です。その寿命はたったの2、3日です。これには大切な理由があります。

 わたしたちは必要な栄養を取り込むために食事をとりますが、このとき、からだにとって有害なものも一緒に小腸に届いてしまいます。そこで、小腸は寿命を短くして、古くなった細胞を新陳代謝でどんどん捨てていきます。このとき、古い細胞と一緒に有害なものも排出しているのです。

 便は、消化吸収された食物の残りかすというイメージがありますが、じつは便のほとんどがこうした小腸由来の古い細胞と言われています。

 小腸の細胞はあえて寿命を短くすることで、有害なものからからだを守っているのです。

 また、小腸は栄養を吸収する大切な臓器です。ですから、小腸が病にかかったときも、早期に修復できるように再生を活発に行っているとも考えられています。

 逆に、肝細胞はふだんはほとんど分裂しません。

 でも、損傷を受けるとさかんに分裂します。肝臓の大部分を手術で切除しても元通りに再生するのは、肝細胞のこのような性質のためです。

 肝臓は解毒作用という大切な働きを担っている臓器ですから、いざというときの再生力はとても強いのです。

最後に

 このように、細胞はからだの部位によって働きや性質が異なります。ここでお話しした細胞はほんの一例です。

 200種類60兆個の細胞は、それぞれ役割を果すために日々再生されています。それはひとえに病気やケガから回復し健康を守るためです。

 細胞の再生力は、みなさんのからだに備わっている「自己治癒力」の1つです。

参考文献:人体ミクロの大冒険 角川書店、生物基礎 東京書籍

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