からだはいつも治ろうとしている~免疫力・炎症

からだはいつも治ろうとしている~免疫力・炎症

 わたしたちは、自分のからだに備わっているしくみのことを意外と知りません。

 だれでも日々の生活の中で病気にかかったりケガをしたりしますが、そこから回復しているのはからだに備わっている治す機能がはたらくからです。

 東洋医学では、この治す機能のことを自己治癒力とか自然治癒力と呼んできました。科学の進歩によって、これまで謎だった自己治癒力の実態がだんだんと明らかになってきました。

 その代表的なものは、免疫システムです。書籍やテレビなどで、免疫力という言葉を目にする機会も増えてきました。

 でも、わたしたちは免疫力について誤解している部分もあります。

 それは、炎症です。

 炎症と聞くと風邪をひいたときののどの痛みやケガをしたときの腫れなどを思い浮かべ、悪いイメージがありますが、実は炎症も免疫力の一部だったのです。

 そこで今回は、炎症も含めた免疫力について、生理学に基づきわかりやすくお話しします。

このページの目次
  1. 免疫とは
  2. 炎症とは
  3. 最後に

免疫とは

 わたしたちは常に細菌やウイルスなどの外敵に囲まれて生活しています。外敵にとってわたしたちの体内はとても魅力的なもので、いつも侵入の危険にさらされています。

 しかし、わたしたちのからだには、ウイルスや細菌などの侵入を防いだり、侵入された場合でもそれを排除する力(機能)が備わっています。

 これを免疫力(免疫機能)といいます。

最初にはたらく防御機構

 わたしたちのからだは、皮膚や粘膜によって外界と境界されています。この皮膚と粘膜には、外敵の侵入に対してはたらく最初の防御機能が備わっています。

 皮膚はからだの内側から絶えず新しい皮膚を再生して、一番外側の古い細胞は垢(あか)として捨てることで、外部からの細菌などの侵入を未然に防いでいます。

 外界と接している眼、鼻、口などの粘膜の表面には、涙・唾液などの体液があります。これらはつねに新しくつくられ、体外へ排出されています。このような体液の流れは、外敵を洗い流すのに役立ちます。

 また粘膜を覆う体液中には、細菌やウイルスをやっつける物質が含まれています。胃では、強い酸性の胃液が食べ物と一緒に飲み込まれた細菌などを退治します。気管の粘膜では、繊毛によって異物を排泄したり、咳やくしゃみによって外敵を吐き出すしくみがあります。

 また、皮膚や粘膜の表面には、さまざまな常在菌がいて、病原菌からからだを守っています。

侵入された異物に対してはたらく防御機構

 第1の防御機構をうまくすり抜けて体内に侵入したウイルスや細菌などの異物に対しては、第2の防御機能がはたらきます。

 それは、血液中の白血球です。

 白血球は大きく分けて、顆粒球、マクロファージ、リンパ球の3種類があります。

 顆粒球は、細菌などの小さな異物が体内に侵入したときに、それらを取り込んで分解します。マクロファージは大食細胞といい、大きな異物を貪食して除去します。

 リンパ球は、リンパ液やリンパ節にいるほか、血液中にも存在し、ウイルスなどに感染した細胞を排除してくれます。

 ウイルスは人の細胞内に侵入して、細胞の中で急速に増殖したのち外に放出されます。そして、増殖したウイルスが、さらに他の細胞に侵入することで増殖を繰り返し、からだの中で感染が広がっていきます。

 リンパ球はウイルスに侵入された細胞を排除することで、感染のひろがりを防いでいます。

炎症とは

 炎症とは、「生体に侵入した異物を除去し、また、損傷をうけた組織を修復する一連の生体防御反応」です(生理学 医歯薬出版株式会社より引用)。

 わたしたちは「炎症はからだにとって悪いこと」というイメージを持っていますが、まったくの逆で、炎症は侵入してきた異物を退治しようとしている、あるいは、損傷したところを治そうとしている反応です。

 ちなみに今は、高校の生物の教科書にも、このことが記載されています(生物基礎 東京書籍など)。

 からだを治そうとしている炎症について、もう少し詳しくお話しします。

 炎症は赤く腫れたり、痛みや熱感などの不快な症状をともないます。

 このため、わたしたちは炎症に対して悪いイメージをもち、消炎鎮痛剤などで炎症をおさえたくなります。

 でもこのとき、からだの中ではとても大切なことがおきています。

 ウイルスや細菌などの異物が侵入すると、周辺の細胞から化学物質が放出されます(たとえば、肥満細胞からはヒスタミンが放出されます)。

 これらの化学物質により血管が拡張して、血流量が増加し、その結果、白血球がどんどん集まってきます。白血球は血管の隙間を通って、感染した組織内へと向かい、侵入してきた異物を退治します。

 異物が侵入した場所は、血流量がふえるので赤く腫れた状態になります(発赤)

 さらに、マクロファージのはたらきかけによって、体温は上がります。高い体温は、ウイルスや細菌などの増殖をおさえるとともに、白血球のはたらきを高める効果があります。

 からだは異物を退治するために、わざわざ体温を上げているのです(発熱)

 また、分泌される化学物質には発痛作用もあります。痛みは、異物が侵入して、今、退治していることを知らせてくれています(発痛)

 発赤・発熱・発痛、これら一連の反応のことを「炎症作用」といいます。

 つまり、炎症は、第2の防御機構がさかんに働いている状態なのです。

 そして、ついに異物が退治されると炎症作用は終息して、痛みや腫れ、発熱などの症状は自然に消えていきます。

 私たちが不快と感じる症状は、血流量が増え異物を退治する際に生じるもので、この辛いプロセスの先に、治癒というゴールが待っています。

 「炎症」は、からだにとってとても大切な「生体防御反応」だったのです。

最後に

 免疫のしくみを知ると、からだはいつもウイルスや細菌の侵入を防ごうとしていることや、病気やケガを治そうとしていることがよくわかります。

 免疫力はみなさんのからだに備わっている「自己治癒力」の1つです。

 東洋医学では、健康とは自己治癒力がしっかりはたらいている状態をいいます。

 ところが、なかには自己治癒力が低下してしまい、病気や不快な症状からなかなか回復できずに辛い思いをしている人がいます。

 なぜ自己治癒力は低下してしまうのでしょうか? どうしたら自己治癒力は回復するのでしょうか?

 東洋医学と西洋医学の知見を交え、こちらで詳しくお話しします。

参考文献:生理学 医歯薬出版株式会社、生物基礎 東京書籍、安保徹 薬を止めると病気は治る マキノ出版

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