妊娠の成立を左右するミトコンドリアのはたらき

妊娠の成立を左右するミトコンドリアのはたらき

 わたしたちのからだは約60兆個の細胞が集まってできていて、1つ1つの細胞がエネルギーをつくりだすことで、生殖活動が支えられています。

 ミトコンドリアとは、細胞の中で実際に活動エネルギーをつくりだす小器官で、妊娠の成立に深く関わっています。

ミトコンドリアが作り出す活動エネルギー

 食べ物の栄養や呼吸から得た酸素が血流にのって細胞に運ばれ、それを燃料として、各細胞がエネルギーを作り出しています。

 妊娠も、細胞の産出するエネルギーが基盤になっています。

 実は、細胞の中には、エネルギーを作る仕組みが2つあります。1つは「解糖系」、もう1つは最初にお話しした「ミトコンドリア系」と呼ばれる仕組みです。

 2つはそれぞれ特徴があります。

【解糖系】

 「解糖系」は、食べ物から得られる栄養素をエネルギーに変える仕組みです。

 原料になるのは主にブドウ糖です。糖を分解するだけの単純なしくみなので、すぐにエネルギーを作り出せます。

 ただし、一度に作り出せる量は決して多くありません。

 ですから、とりあえず今すぐにエネルギーが必要、というような場面で解糖系が働きます。

【ミトコンドリア系】

 細胞の中にあるミトコンドリアという小さな器官がエネルギーを作り出します。

 酸素やさまざまな栄養素をつかって、解糖系とは比較にならないほど多量のエネルギーを生み出すことができます。

 ただし、工程が複雑なため、エネルギーをつくりだすまでに時間はかかります。

 まとめると、「解糖系」は、エネルギーをすばやくつくれますが、一度に作り出せる量はごく少量です。

 「ミトコンドリア系」は、エネルギーを産出するのに時間はかかりますが、多量のエネルギーをつくりだすことができます。

 膨大なエネルギーを長期間に渡って必要とする妊娠は、ミトコンドリア系の働きに支えられているわけです。

卵子に存在するミトコンドリアの数

 ここで大切なことは、ミトコンドリアは1つの細胞に1つではなく、多数存在しているということです。体の部位によってその数は異なります。

 例えば、一生拍動を続ける心臓は持久力が必要です。そのため、心臓を構成している1つ1つの細胞には、多量のエネルギーを生み出せるミトコンドリアがいっぱい存在しています。その数は数百個といわれています。

 卵子も1つの細胞なので、卵子の中にも存在します。では、卵子にはいったいどのくらいの数あるのでしょうか。

 成熟した1つの卵子には、じつに10万個ものミトコンドリアが存在すると言われています。ミトコンドリアが多く集まる心臓や骨格筋、脳では、1細胞当たりの数は数百~5千個ほどですから、これをはるかに上回る、膨大な数にのぼります。

 そもそもたった1つの細胞である受精卵が細胞分裂を繰り返して、60兆個という膨大な数の細胞でできているからだをつくろうしているのです。

 ですから、それだけ多量のエネルギーが必要になります。そのため、1つの卵子に10万個も存在しているわけです。

妊娠の成立を左右するミトコンドリア

 卵巣内にある卵子は、ミトコンドリアの作り出すエネルギーを使って成熟します。

 そして、通常、毎月1~2つの卵子が排卵します。排卵した卵子は、卵管の中で精子と出会い、受精卵になった卵子は細胞分裂をはじめます。

 もしこの過程で、卵子のミトコンドリア系のはたらきが不十分だった場合、エネルギーが不足して細胞分裂が止まってしまうことがあります。

 そうなると受精卵は育たなくなります。

 卵子が成熟するのも、受精卵が分割して成長するのも、ミトコンドリアのはたらきにかかっています。

 細胞分裂を繰り返しながら、卵管を移動して子宮内にたどり着いた受精卵は、子宮内膜に着床しますが、この時にもミトコンドリアの働きがなくては、着床は起こりません。

 無事に着床すると、今度は子宮内膜に胎盤が作り始められます。

 この際にも子宮内膜のミトコンドリアがとても重要で、生み出されるエネルギーが少ないと、胎盤が十分に発育できず流産をまねくことになります。

 このようにミトコンドリアは、卵子の成熟から妊娠、出産に至るまで、その全過程において重要な役割を担っています。

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