ピロリ菌は悪い菌?良い菌?いったいどっち

ピロリ菌は悪い菌?良い菌?いったいどっち

 ピロリ菌は、胃潰瘍や胃がんとの因果関係が広く知られています。

 しかし、近年、ピロリ菌を除去した人に逆流性食道炎が多発しているという報告があったり、逆にピロリ菌除去と逆流性食道炎との因果関係はみとめられないという見解があったり、ピロリ菌は人のからだにとって、良い菌なのか、それとも悪い菌なのか、混乱してしまいますね。

 これについて、最近、なるほどなと思える、わかりやすい文献(*1)があったので紹介します。からだの仕組みを知り、健康な毎日を送るヒントになれば幸いです。

ピロリ菌の歴史

 まず、ピロリ菌の歴史を少しだけお話します。ピロリ菌が初めて発見されたのは1979年。その後、オーストラリアのウォーレン博士とマーシャル博士の研究によって、胃潰瘍とピロリ菌の因果関係が明らかになり、2005年、2人にノーベル賞が授与されました。

 そして、現在、日本ではピロリ菌の除菌治療が保険診療として認められています。

わかってきたピロリ菌の作用

 では、文献(*1)を紹介します。ピロリ菌は子供の頃に感染して、日本では約半数の人が、50歳以上では70%の人が保菌者です。

 でも、これだけの保菌者がいながら、胃がんの発症は70代以降で多く、その率も1%だそうです。

 学会などの見解をみても、欧米では“中学生以下の子供にはピロリ菌の除去は行うべきでない”と考えられていて、日本小児栄養消化器肝臓学会でも、“胃がんの予防目的で症状のない子供に検査や除菌を行うべきでない”と注意を促しています。

 一方、日本ヘリコバクター学会は、“全高校生を検査して、除菌することが望ましい”としています。

 ピロリ菌には、からだにとってよい作用があることもわかってきました。ピロリ菌は、胃酸を中和する作用があり、逆流性食道炎や食道がんなどを抑える働きがあるとされています。

 さらに、保菌者ではアレルギーが40%も低く、ピロリ菌は免疫系のバランスを調整している可能性が示唆されています。

 これらの事から、一概に、ピロリ菌は除去した方がよい、除去しない方がよい、ということは言えないようです。

 文献(*1)では、「若い人は、ピロリ菌がアレルギーを抑制するというプラス面を考慮すると、胃に異常がなければ、腸内細菌のバランスを崩してまで除菌する必要はない。一方、成人後は、胃潰瘍や萎縮性胃炎が胃がんのリスクを高めるので、症状のある患者のみを除菌するのがバランスのよい対応と考えらえる。」としています。

ピロリ菌は悪い菌?良い菌?

 ここからは、私見になりますが、以上のことからピロリ菌は「悪い菌」でもあり、「良い菌」でもあると言えるのではないでしょうか。

 先述のように、その人の胃の状態によって、ピロリ菌がプラスに作用をすることもあれば、マイナスに作用をすることもあります。

 ですから、ピロリ菌の除菌については、”除菌の必要性とその副作用について”、主治医からしっかりと話を聞いて、納得された上で決めるのがよいと思われます。

 ピロリ菌には、悪い面も良い面も両方あるというのは、もやもやした感じがしますが、からだの仕組みにはよくあることです。

 例えば、腸内フローラという言葉をご存じでしょうか。

 腸の中には、沢山の菌が住んでいて、私たちの健康を左右しています。

 腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類に分けられ、2:1:7の割合が最もバランスのよい状態とされています(*2)。たとえ「善玉菌」でも、増えすぎると体に害を及ぼすことになるし、「悪玉菌」でも、減り過ぎると健康を害することになります(このことから、最近では、善も悪もない、発酵菌、腐敗菌、代謝調整菌と呼ばれるようになってきました)。

 このように、絶妙な体内バランスによって、わたしたちの健康は保たれています。

ピロリ菌がプラスに作用するからだ

 健康的な日々を送るには、ピロリ菌などがプラスに作用するように、良い体内バランスを保つことが大切です。

 そのためには、睡眠を十分にとり、規則正しい生活と栄養バランスのとれた食事を心掛けることです。

 でも、どうしても、仕事や家庭のことで無理が続いたり、過度のストレスが原因で、体内のバランスが乱れ、胃腸などの調子を崩してしまうことがあります。

 病院によっては、症状を和らげる薬を処方してくれるところもありますが、副作用が心配という方には、東洋医学の鍼灸治療や漢方という対処方法もあります。

 漢方薬は、植物などの成分でできているので、副作用の心配は少ないです。鍼灸治療はからだのツボに、鍼やお灸を施すことで症状をやわらげます。副作用はほとんどなく、胃腸症状にも効果的です。

 鍼灸治療で体内バランスが整うということは、科学的にはまだ解明されていませんが、鍼灸で胃腸の調子が良くなることは、昔からよく知られています。何千年も前から、胃腸の治療に使われてきたツボもあります。

 実際に鍼灸治療をしていると、胃の調子がよくなる方や、便秘や下痢が解消されていく方がいます。これは、鍼灸の作用によって、体内バランスが整い、胃腸の調子が改善されるのではないかと考えています。

 なんだか最近、胃腸の調子がすぐれないと思う方は、一度、鍼灸治療を試されてはいかがでしょうか。

*この記事は、2019年1月現在の学説、学会の見解をもとに作成しました。科学の進歩に伴って、学説はかわることがあることをご留意ください。

参考文献

*1:健康科学研究所所長 井上正康:「健康長寿処方箋60」2019年 月刊東洋療法297

*2 健康科学研究所所長 井上正康:「健康長寿処方箋41」2018年 月刊東洋療法278

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