産後の悩み
赤ちゃんを出産後、お母さんの体は妊娠前の元の身体に戻っていきます。産後、6週間~8週間の時期を産褥期(産後の肥立ち)と呼び、心身が順調に回復していくことを、「産後の肥立ちが良い」と言います。
妊娠・出産は女性にとって、肉体的にも精神的にも大きな負担がかかります。特に産後は、出産時の出血や哺乳のために、血液が不足しやすい時期です。
そして、この時期には、悪露(おろ)がいつまでも赤い、高熱が出る、乳房がはれて痛む、マタニティブルーや産後うつなどが、起こることがあります。
悪露がいつまでも赤い
悪露とは、出産後に、胎盤がはがれたあとの出血や産道の傷からの分泌物、粘液や細胞組織のかけらなどが混じり合って排泄される分泌液のことです。
悪露は産後3~6週間ほど続きます。子宮が収縮するにつれて、子宮内の傷も治り、出血もだんだんと減ってくるので、悪露の色も薄く、量も少なくなっていきます。
しかし、10日以上をすぎても血が混ざったような赤い色をしている場合、子宮復古不全の疑いがあると言われています。子宮復古不全とは、子宮の収縮が十分でないために子宮の回復が遅れることです。
原因として、子宮内に胎盤の一部や卵膜のかけらなどが残っている場合や、悪露が出にくくなっている場合、また、子宮収縮を促すオキシトシンというホルモンの分泌が少ない場合などが考えられています。
子宮の回復が遅かったり、家事や仕事を早くからやり過ぎたりすると、いつまでたっても赤色の悪露が続くことがあります。
悪露の状態は、子宮の回復を示すバロメーターと言えます。
高熱が出る
産後2~3日したころ、突然38度~39度の高熱がでることがあります。これは産褥熱と言われています。
分娩の時にできた子宮壁や膣壁の傷から細菌が入ったことが原因です。出産後に体力が低下したために免疫力が落ち、体内で菌が繁殖したものと考えられています。
また、悪露が停滞すると、細菌が増えやすい環境となるため注意が必要です。
他に、腎盂炎の場合も40度を超えるような高熱が出ます。細菌が尿道に入り、感染することがあります。
産後は、子宮や膣、外陰部などさまざまなところに傷があるため、細菌に感染しやすい状態です。
産褥熱は、昔は母体の生命にも危険が及ぶために恐れられていましたが、現在では、分娩時に予防処置もとられるため心配は少なくなっています。
排尿時に痛む
尿の回数は多いのに、1回の尿の量は少なく、排尿時に痛みを感じる場合は膀胱炎の可能性があります。膀胱は産道と隣り合っているので、出産時の圧迫で傷がついたり、尿が出にくくなったり、細菌にも感染しやすくなるためです。
悪露の手当てをきちんとして、清潔を保つことが大切です。
乳房がはれて痛む
これは、初産に多く見られる乳腺炎です。乳房が赤くはれて痛み、硬く、熱を持ったりします。
寒気がして38度以上の熱が出ることもあります。乳腺炎は、乳首の傷から細菌が入り、炎症を起こすことが主な原因と言われています。
産後2~3週間になることが多いようです。
腱鞘炎で指や手首が痛む
産後の慣れない育児で、腱鞘炎になる方が意外と多くいます。赤ちゃんの抱っこや哺乳、おむつ替えなど、手首や指への負担が増えることで腱鞘炎になることがあります。
最近では、プロゲステロンというホルモンの影響で、腱鞘が狭くなり炎症が起きるのではないかという、ホルモン影響説もあります。
ボディラインが気になる
分娩後は子宮周りの筋肉や、おなかや腰の皮膚が伸びきって緩んでいます。通常は自然に戻りますが、人によっては回復に時間がかかったり、肥満体形になってくる方もいます。
妊娠・出産によって変形した骨盤は、出産後、ご自身の回復力で元に戻ってくるものですが、中には、戻りにくい人もいます。
マタニティブルーと産後うつ
原因は医学的にはっきりしていませんが、出産後はホルモンバランスが激変するため、これが精神状態に影響して起こると考えられています。
マタニティブルーは一過性の情緒不安定で、ちょっとしたことで憂鬱になったり、涙もろくなったり、イライラしたり、落ち込んだりします。
出産後2~3日以内にあらわれ、10日ぐらいで軽快します。通常、ホルモンバランスは1~2週間で妊娠前の状態に戻り、気持ちも自然に落ち着いてきますが、重いと産後うつに移行する場合もあります。
産後うつは、産後2~3週間から数カ月以内にはじまり、気持ちが落ち込み、終日ふさぎ込んだりします。
一過性のマタニティブルーとは違い、1カ月、長いと年単位で続くと言われています。不安、不眠、食欲不振などを伴うこともあります。
東洋医学に基づく産後の鍼灸ケア
出産後の経過は人によってさまざまです。産後の肥立ちに個人差があるのはなぜでしょう。
それは、その人の回復しようとする力、すなわち自己治癒力に差があるからと考えています。産後、スムーズに回復していく人は、自己治癒力がしっかりと働いています。
ところが、からだに冷えが生じると、自己治癒力の働きは弱まってしまいます。東洋医学には、「冷えは万病のもと」という言葉があるのをご存じでしょうか。
みなさんの身体には、生まれてから今までの疲れがたまっています。今までの疲れとは、仕事の内容、人間関係、生活習慣、これまでにかかった病気やケガなどが元になります。
これらが要因となって、気血の流れ(血流)にかたよりやとどこおりが起こります。そして、だんだんと身体の芯が冷え、自己治癒力は低下していきます。
この冷えを「根元的な冷え」といい、病の根本原因と考えています。(*1)
妊娠・出産はからだにとって大きな負担になります。特に出産にともなう出血や体力の低下は、気血の流れに乱れを起こし、一時的に大きな「冷え」を生じます。出産直後、寒い思いをされた方も多いのではないでしょうか。
難産だったり、産後、無理をしたりすると、からだの芯に冷えが残ることがあります。
すると、子宮復古不全を招いたり、悪露がいつまでも続いたり、免疫力が落ち膀胱炎や乳腺炎になったりします。
体形もなかなか元に戻らず、女性としてはとても悩ましい状況になります。
冷えの影響は精神面にも及び、マタニティブルーが長引いたり、産後うつを招くこともあります。
ここまで低下してしまった治癒力は、自分の努力だけでは回復が難しい場合があります。そんな時、鍼灸がお手伝いいたいます。
はりとお灸で、気血のめぐりを整え、冷えをとり、自己治癒力の働きを高めていきます。
また、鍼灸には、精神安定作用もあると言われています。
近年の研究では、鍼灸治療で、リラックス作用のあるエンドルフィンなどのホルモンが分泌されることが科学的にも明らかにされました。さらに、抗ストレスホルモンであるオキシトシンを放出させることも解ってきました。(*2)
心と体が元気になる鍼灸は、産後のからだとも相性がピッタリです。
産後の悩みを抱えている方、ぜひ一度、はなもも鍼灸治療院にご相談ください。
参考文献 (*1)小林詔司 積聚治療 医道の日本社、 (*2)はりきゅう理論 医道の日本社

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