冷え性
冷え性に悩んでいる人は意外と多いのではないでしょうか。特に、女性によくみられますが、男性も決して珍しくありません。
ここでは、冷え性と当鍼灸院で行っている施術についてお話します。
冷え性とは
「冷え性」という言葉と「冷え症」という言葉がありますが、冷え性は冷えやすい体質のことを言い、冷え症は手足や腰が冷たいなど、実際に冷えの症状が認められる状態を言います。
冷え性も、冷え症も、いずれも鍼灸治療の対象です。
冷えは、病気による血行障害が原因になることもあります。特に、膠原病、腎炎、糖尿病、低血圧などは冷えをともなうことがあります。
女性では、月経不順や更年期障害などの婦人科系の病気が原因で起こることもあります。
一方、特にこれといった病気のない人にも冷えはみられます。明らかな原因がないにもかかわらず、手足や腰、お腹などに冷えを感じています。
近年、このような健康な人の冷え性が増えています。
これを示唆するように、日本人の平均体温は昔と比べて低く、およそ50年前の平均体温は36.9度、これに対して、現在は36.2度です。自分は35度台、という人も多いのではないでしょうか。
体温の仕組み
ここで、冷え性の根幹に関わる体温の作られ方についてお話します。
皆さんのからだは、約60兆個の細胞から構成されています。皮膚、骨、筋肉、内臓などはすべて細胞が集まってできています。
1つ1つの細胞が、食事で摂った栄養素と呼吸で得た酸素を燃料にして活動エネルギー、つまり、生きていくためのエネルギーを作り出しています。これを基礎代謝といいます。
活動エネルギーを作り出し利用する過程で熱が発生します。
この熱が「体温」です。
細胞の代謝によって生じる熱は、体温全体の大きな割合を占めています。
特に食後は、消化器のはたらきが高まり、吸収された栄養素を使って細胞の代謝が活発になり熱が発生します。食後、からだが温かく感じるのは、内臓で代謝が上がるからです。
また、女性ホルモンも代謝を促進して体温を誘発します。
黄体ホルモン(女性ホルモン)は代謝を促進する作用があり、排卵直後から月経までの間、基礎体温を上昇させます。排卵後は体温が上がり妊娠しやすくなるわけです。
代謝以外では、筋肉が収縮するときにも体温は発生しています。
運動をすると、筋肉が激しく収縮して体温が上がります。運動をしなくても座っている時や立っている時は、姿勢を保持するために筋肉が収縮して熱が発生しています。
また、寒い時にはガタガタとからだが震えますが、これはふるえ産熱と言って、筋肉が細かく収縮することで体温を作り出しています。
筋肉のふるえ産熱に対して、非ふるえ産熱は代謝を積極的に高めることで体温を作り出しています。
非ふるえ産熱は、肝臓などの臓器でおこります。特に、褐色脂肪組織という特別な脂肪組織は、肩甲骨の間などに存在し、積極的に熱を産生することで体温の維持に貢献しています。褐色脂肪組織は新生児で特に多く、成人になると少なくなります。
まとめると、体温は主に、60兆個の細胞が行っている代謝と日常生活動作や運動時に起こる筋収縮によって作り出されています。
特に、「代謝」によって発生する熱は体温の大部分を占めており、食事や女性ホルモン、褐色脂肪細胞などによって、その働きは高まる仕組みになっています。
体温の話をする上でもう一つ重要な事があります。それは、血流です。
代謝や筋収縮によって作られた熱は、血流に乗ってからだの隅々にまで運ばれます。
こうして、頭から手足の末端まで、全身が温かく保たれるわけです。
冷え性の危険性
しかし、代謝が低下したり、血液循環が悪くなったりすると、一見、健康そうに見える人でも冷えに悩まされることになります。
代謝や血流がさらに悪化すると低体温を招くことにもなります。
「体温が低いだけ」と思われるかもしれませんが、低体温だと身体機能に様々な障害が起きることがあります。
人の身体には体内酵素という、あらゆる生命活動を支える酵素があります。
この体内酵素が活発に働く体温が、36度5分から36度8分の間です。
35度台の低体温になると、酵素の働きが低下して身体機能が鈍くなり、ホルモンバランスの乱れ、免疫力の低下、自律神経障害、血行不良、便秘、肥満、肌荒れ、くすみ、などが起こりやすくなります。
低体温も冷え性の1つです。ほっておくと思わぬトラブルを招くことになるので、しっかりと対策をとりましょう。
冷え性の対策
ここでは、冷え性対策を紹介します。手先・足先の冷えを感じているなら、今すぐ実践してみましょう。
栄養バランスのとれた食生活
偏食や無理なダイエットは冷え性の要因になります。これは、タンパク質、脂肪、ビタミン、ミネラルが不足して代謝が低下するからです。
代謝機能がしっかりと働いて熱が作られるように、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。毎食、「色々な食材を食べる」ことを意識すると栄養バランが整いやすくなります。
また、緑黄色野菜、レバー、チーズ、ゴマ、大豆製品など、血液循環をよくするビタミンEが豊富な食品も積極的に摂りましょう。
東洋医学には、「食材の特徴を上手に利用して健康に役立てる」という考え方もあります。
一般に、夏野菜はからだを冷やす作用を持っています。エアコンが無かった時代は、夏野菜をとることで体温調整がうまくできていました。反対に、寒い季節は、からだを温める作用を持つ根菜類などの冬野菜を食べることで、冷え性予防になっていました。
一年中冷えに悩まされている人は、根菜類などの冬野菜を積極的にとり入れた食事を心がけましょう。
冷たい飲食物もできる限り控えましょう。
夏だからといって、エアコンのよく効いた部屋でアイスや冷たい飲み物を摂っていると、からだの内側と外側の両方から冷やすことになります。
からだを冷やす飲食物はできるだけ控え、温かい食事を摂るようにしましょう。
規則正しい生活
冷え性は、生活習慣の影響を受けやすいこともわかっています。つまり、努力次第では改善することも可能なわけです。
日頃からいかに規則正しい生活を送るかも大切です。不摂生な生活を控え、早寝早起きを心がけて、基礎代謝を高めましょう。
また、緊張状態は、血管が収縮して血液循環が悪くなります。ストレスによる血流の悪化は、現代人の冷え性の大きな要因です。
意識的に休憩をとり、リラックスする時間を作りましょう。
入浴などで血液循環を促すのも効果的です。シャワーの水圧を利用した、全身マッサージもいいでしょう。
適度な運動
女性は男性に比べて筋肉量が少ないため、どうしても冷え性になりやすい傾向があります。
こまめな運動で筋肉量を維持したり、基礎代謝をアップしたりしましょう。
「気持ち良い!」と感じられるような有酸素運動がオススメです。ウォーキングなど、ちょっとした運動から始めましょう。
ストレッチ体操で手足を伸ばして血液循環を促すのも効果的です。指先まで血流が行きわたると温かく感じられます。
服装
服装にも気を使いましょう。
特に女性は、きつめのガードルやジーンズ、ブーツなどで下半身を締め付けないように気をつけてください。血流の悪化に繋がります。
また、肌の露出の多い服装をしていると、肌からの放熱を防ごうとして血管が収縮してしまいます。日頃から肌の露出はひかえましょう。
冷えを感じやすい低温期は一枚余分に羽織ったり、腹巻やレッグウォーマーを使ったりして保温を心掛るといいでしょう。
お灸
鍼灸は二千年以上前に古代中国で誕生し、6世紀頃、日本に伝わってきました。その後、日本独自の発展を遂げ、代替医療(通常の医療の代わりに用いられる医療)として広く普及しました。現在は、大学病院などでも採用されるようになってきました。
冷えの程度によっては、ご家庭のお灸で対処できることもあります。お灸のツボ刺激は、血液循環を促進して代謝アップが期待できます。
ドラックストアなどで家庭用のお灸が購入できるので、試してみてはいかがでしょうか。
冷え性には、背中にある身柱(しんちゅう)や、腰にある命門(めいもん)と呼ばれるツボがあります。上手にお灸を施すと全身がホカホカしてきます。
手の冷えには合谷(ごうこく)や曲池(きょくち)、足の冷えには三陰交(さんいんこう)や湧泉(ゆうせん)というツボが効果的です。
お腹の冷えが気のなるときは、気海(きかい)、天枢(てんすう)など、おへそ周りのツボにお灸を施しましょう。
身柱(しんちゅう)
「身」はからだ、「柱」は家を支える大切な大黒柱を意味しています。つまり身柱は、からだの大黒柱の役目をしているツボ、というわけです。
このツボの周りには褐色脂肪組織も多く存在しているので、お灸で刺激すると、からだがだんだん温かくなってきます。
ツボの見つけ方は、左右の肩甲棘(肩甲骨内側の出っ張り)を結んだ線の高さに第三胸椎棘突起(背中の中心線上の出っ張り)があります。そのすぐ下に身柱はあります(下図)。
命門(めいもん)
このツボは名前の通り、命の門という意味です。生命力の中心というわけです。生まれながらに持つ「先天の気」が、このツボから出入りして健康は保たれています。
冷え性の体質改善には欠かせないとても大切なツボです。
ツボの位置は、第二腰椎棘突起のすぐ下にあります(下図)。
合谷(ごうこく)
このツボは、親指と人差し指の合間にある谷(窪み)にあることから、合谷と呼ばれています。この谷から活力となるエネルギーが湧き出ているとされています。
合谷は、冷え性だけではなく、頭痛、歯痛、鼻血、乗り物酔い、ぜんそく、てんかん、生理痛や生理不順などにも活用され効果をあげる、とても応用範囲の広いツボです。
見つけ方は、手の甲を上にして指を開き、親指と人差し指の付け根を、反対の手の親指と人差し指で挟んで押し探ると、痛みを感じる窪みがあります。ここに合谷はあります(下図)。
曲池(きょくち)
「曲」は曲がる、「池」はたまるという意味があります。つまり、肘の曲がる位置にあるツボで、疲れがたまりやすい場所であることを示しています。
ここに疲れがたまると、手に向かう気の流れが滞り手先が冷えてきます。お灸でたまった疲れを取ると、気が流れて指先まで温かく感じられます。
このツボは、肘の横しわの親指側の端にあります。指で圧迫すると痛みを感じます。
三陰交(さんいんこう)
3つの経脈、つまり、脾経、肝経、腎経が交わる大切なツボが三陰交です。昔から女性のツボとして有名ですが、下半身の冷え対策にもよく使用されます。
三陰交の見つけ方は、内くるぶしの中央から指幅4本分ほど上がった骨際にあります(下図)。
湧泉(ゆうせん)
湧泉というツボ名は、「先天の気」が泉のように湧き出るところ、という意味です。先天の気はここから湧き出た後、全身を巡ります。
湧泉のお灸は血行を整えるので、様々な病気が原因で起こる冷えを和らげてくれます。
ツボの位置は、土踏まずのほぼ中央にあります。見つけ方は、足の裏の中央より少し前で、足の指を曲げた時に窪むところを探ります(下図)。
気海(きかい)
文字通り、気の海という意味です。東洋医学で生命力をあらわす「気」が、集中するツボであることを言い表しています。
気の欠乏は冷えを招き、気の充実は冷えの解消を早めます。気海を整えて、気を充実させましょう。
ツボの位置は、臍(へそ)の中心線上で、指幅一本半分くらい下にあります。
天枢(てんすう)
東洋医学では、人のからだを上下に分けた場合、臍(へそ)より上を「天」、下を「地」と呼びます。天枢は、ちょうど天と地の気が交差する位置にあります。
「枢」は「かなめ」という意味で大切な場所を示しています。
つまり、天枢は天と地の気が交差する大切なツボということです。
このツボは、臍の左右、指幅2本分ほど外側にあります(下図)。
冷え性の施術
当鍼灸院では、冷え症状を和らげる「対処療法的な施術」と、冷え性体質から脱却する「根本療法的な施術」を行っています。
具体的には、前章で紹介したツボや、代謝向上・血行促進などのツボを駆使して、まずは、今悩まされている冷えを鎮めていきます。
さらに、冷え性(冷えやすい体質)の根本原因を解消して、本来の温かいからだを取り戻します。
時々、「生活習慣を見直したり、冷え性にいいと言われることを色々試したりしても、なかなか良くならない」と言う人がいます。
これは、冷え性の根本原因を解消しきれていないためと考えられます。原因がからだに残っていては、一時的に良くなったとしても、いずれまた冷えてきます。
冷え性から脱却するには、根本原因を解消することが大切です。
当鍼灸院で取り入れている積聚治療では、冷え性の原因を「生命力の消耗」と捉えています。
生命力は生体活動のエネルギー源です。
先の章でお話したように、人のからだが温かいのは、代謝などの生体活動が行われているからです。
もし、生命力を消耗、つまり、エネルギーが不足すると、代謝などの生体活動が正常に働かなくなり、その結果、からだは冷えやすくなってしまいます。
どんなに生命力にあふれている人でも、限度はあります。仕事や家事で無理を続けていたり、不摂生な生活を続けていたりすると、いずれ生命力は低下してきます。
すると、だんだんと代謝機能が低下してきて、手足などに冷えを感じるようになります。さらに無理を続けていると、慢性的な冷え性に悩まされることになります。
極端な話をすると、生命力を使い果たすと、体内の生体活動は全て停止し全身冷たくなります。
人体は、生命力が充実しているからこそ、温かいのです。
当鍼灸院では、冷え性の根本原因を「生命力の消耗」と捉え、生命力を回復する施術を行っています。
本来の生命力が戻れば、生体活動が正常に働きはじめ、自然と温かなからだに戻っていきます。
手足などの冷えをいち早く鎮める施術と、冷え性の根本原因を解消する施術、この2つを併用して冷え体質からの脱却を図ります。
慢性的な冷え性でお悩みの方、何をやっても良くならない方、ぜひ一度、はなもも鍼灸治療の施術をお試しください。

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